女性経営者の資金繰り

子育てしながらの資金繰り – ワーキングマザー社長の時間管理術

「お母さん、今日も会社行くの?」

朝5時半、まだ薄暗い中で娘のひなたがつぶやいた言葉が、今でも心に残っています。
建設会社の二代目社長として、そして8歳の娘を持つ母として、毎日が綱渡りのような日々。
正直なところ、「これでいいのかな」と自問自答することもありました。

私は佐藤美咲、千葉県船橋市で従業員12名の佐藤建設を経営しています。
父から会社を引き継いで3年、建設業界で女性経営者として奮闘中です。
今日は、そんな私がファクタリングと出会い、資金繰りと時間管理の両立を模索してきた体験をお話しさせていただきます。

なぜこの記事を書こうと思ったか。
それは、私と同じような立場の女性経営者の方に「一人じゃないよ」と伝えたかったから。
日本の女性社長の割合は1割未満という現実の中、建設業界ではさらに少ない。
でも、だからこそ、お互いの経験を共有することが大切だと思うんです。

子育てと経営のリアルな日常

朝5時半から始まる社長と母の顔

我が家の朝は、目覚まし時計が鳴る前から始まります。
5時半起床、まずは娘の弁当作り。
「今日は唐揚げ入れてね」というリクエストに応えながら、頭の中では今日の現場スケジュールを組み立てています。

6時半には夫の雄一を起こし、7時には娘を起こして朝食。
「いってきます!」と元気に家を出る娘を見送った後、作業着に着替えて現場へ向かいます。
この瞬間、母から社長へとスイッチが切り替わるんですよね。

現場・事務所・家庭を行き来するタイムスケジュール

私の一日は、まさに「移動の連続」です。

朝一番で現場を巡回し、職人さんたちと打ち合わせ。
「社長、今日は基礎のコンクリート打設です」「了解!安全第一でお願いします」
現場での会話は短く、でも的確に。
時間との勝負なんです。

午前中は事務所で見積もり作成や資金繰りの確認。
母が手伝ってくれる経理作業を横目に、次の現場の段取りを考えます。
昼食は母の手作りおにぎりか、現場近くの定食屋さん。
ゆっくり食べる暇はありませんが、これが私のペースなんです。

午後は取引先との打ち合わせや、新規案件の現地調査。
そして16時半には一旦事務所に戻り、17時には娘のお迎えへ。
学童保育の先生から「今日も元気でしたよ」と聞くと、ほっと一息つけます。

「娘のためにも頑張らないと」と思える瞬間

帰宅後は、完全に母モード。
宿題を見ながら夕食の準備、お風呂、寝かしつけ…
でも、この時間が私にとって一番大切な時間なんです。

「お母さん、今日ね、友達に『ひなたのお母さんって社長なんでしょ?すごいね』って言われたよ」

娘のこの一言で、どんなに疲れていても「明日も頑張ろう」と思えます。
建設業界で女性経営者として働くことは、確かに大変です。
でも、娘に誇れる母でありたい、その思いが私を支えているんですよね。

建設業界の資金繰り事情

入金サイトと支払いタイミングのズレ

建設業の資金繰りの難しさ、これは本当に頭の痛い問題です。
建設業では、契約から入金まで平均3ヶ月半というデータがありますが、うちの場合もまさにその通り。

例えば、4月に受注した住宅リフォーム工事。
工期は2ヶ月、6月に完成しても、実際に入金されるのは7月末。
でも、その間に材料費や職人さんへの支払いは待ってくれません。

「社長、今月の材料費、いつ頃お支払いいただけますか?」
取引先からの電話に、「今月末には必ず」と答えながら、通帳とにらめっこする日々。
これが建設業経営のリアルなんです。

材料費と人件費、先払いの現実

材料費や外注費を先払いする必要があるというのは、建設業界の宿命みたいなもの。
先月も、大型リフォーム案件で必要な材料費が300万円。
でも、入金は3ヶ月先…

職人さんへの支払いも同じです。
「うちの職人は週払いでお願いします」
小規模な下請けさんほど、資金繰りが厳しいのはお互い様。
だからこそ、きちんと支払いたい。
でも、手元資金には限りがある。

このジレンマ、同じ立場の方なら分かっていただけると思います。
現金商売の重要性を、日々痛感しています。

季節ごとの資金変動とその対策

建設業には「繁忙期」と「閑散期」があります。
梅雨時期や真冬は工事が減り、売上も当然下がります。

私が特に苦労したのは、去年の梅雨時期。
6月から7月にかけて、予定していた外装工事が軒並み延期に。
「雨が続いて工事ができません」
現場監督からの報告に、ため息が出ました。

でも、固定費は変わらずかかります。
事務所の家賃、従業員の給料、リース代…
繁忙期の利益を、いかに閑散期のために残しておくか。
これも経営者の大切な仕事なんですよね。

ファクタリングって何?私の学びと失敗談

「カタカナ苦手なんですよね…」からの出発

2023年夏、資金繰りに本当に困った時期がありました。
大型リフォーム案件が重なり、材料費の支払いが…
銀行の担当者さんに相談したら、こんな提案が。

「佐藤社長、最近はファクタリングという資金調達方法もありますよ」

「ファクタリング?すみません、カタカナ苦手なんですよね…」

正直に言うと、最初は全く理解できませんでした。
企業が保有する売掛金をファクタリング会社が買取るサービスと説明されても、ピンとこない。
「売掛金を買い取る?それって借金じゃないの?」
頭の中は「???」でいっぱいでした。

初めての契約で戸惑ったこと

建設業界の先輩に相談しても「聞いたことないなあ」という反応。
仕方なく、自分でインターネットで調べ始めました。
でも、出てくる情報は男性目線のものばかり。
女性経営者の体験談なんて、ほとんど見つかりません。

そんな中、勇気を出してファクタリング会社に問い合わせ。
初回の面談で、いきなり失敗しました。

「あの、今日は作業着で来てしまったんですが…」
「できれば、もう少しフォーマルな服装の方が…」

現場から直行したので、泥だらけの作業着。
相手の困った顔を見て、「やっちゃった」と思いました。
建設業界では当たり前の格好も、金融の世界では通用しないんですね。

債権譲渡、手数料、面談服装──リアルなつまずきポイント

契約書を見て、また混乱。
「債権譲渡」という言葉が出てきて、「借金を譲るってこと?」と勘違い。
債権譲渡とは、企業が第三者に対して持っている債権を別の取引相手に譲渡することだと理解するまで、担当者さんに3回も説明してもらいました。

手数料の計算も大変でした。
「売掛金100万円で、手数料が15%だと…えーっと…」
電卓を叩きながら、「あれ?合わない…」と3回やり直し。
隣で母が「美咲、落ち着いて」と言ってくれたおかげで、なんとか理解できました。

こんな失敗談、恥ずかしいけど、同じような経験をされる方の参考になればと思い、正直に書きました。

実際に使ってみてわかったこと

銀行融資との違いとスピード感

実際にファクタリングを利用してみて、一番驚いたのはそのスピード感です。
銀行融資だと、申し込みから実行まで2週間から1ヶ月。
でも、ファクタリングは最短で即日!

初めて利用した時のことは今でも覚えています。
月曜日の朝に申し込んで、その日の夕方には入金確認。
「え?もう振り込まれてるの?」
通帳を見て、思わず二度見しました。

ファクタリングを利用することで資金を早期に調達でき、新規案件を受注しやすくなるというのは本当でした。
急な材料費の支払いにも対応でき、職人さんにも迷惑をかけずに済みました。

ファクタリング会社の選び方(私なりの視点)

ファクタリング会社選びは、正直悩みました。
たくさんの会社があって、どこがいいのか分からない。
そこで、私なりの選び方のポイントをまとめてみました。

私が重視したポイント:

  1. 説明が分かりやすいか
    専門用語を使わずに、丁寧に説明してくれる会社を選びました。
  2. 手数料が明確か
    2社間ファクタリングの手数料の相場は10%〜20%と知ってから、相場と比較して判断しました。
  3. 建設業の実績があるか
    建設業とファクタリングの相性がよいとはいえ、業界を理解している会社の方が話が早いです。
  4. 女性スタッフがいるか
    これは個人的な希望ですが、女性スタッフがいると相談しやすかったです。

「借金とは違う」という感覚の変化

最初は「ファクタリング=借金」だと思っていました。
でも、使ってみて分かったのは、全然違うということ。

借金は返済義務がありますが、ファクタリングは売掛金を売却するだけ。
ファクタリングは負債ではなく、売掛金の売却という扱いなので、貸借対照表も悪化しません。

「これって、持っている資産を現金に変えるだけなんだ」
この感覚の変化は大きかったです。
罪悪感なく利用できるようになりました。

ただし、手数料はかかります。
だから、本当に必要な時だけ、計画的に利用することが大切。
これも、実際に使ってみて学んだことです。

時間管理とメモ魔の力

ノートにびっしり書いた資金繰りのポイント

私、実はメモ魔なんです。
現場用の小さなノートを常に持ち歩いて、気づいたことは何でも書き込みます。

ファクタリングについて学んだ時も、ノートが大活躍しました。
「債権譲渡=売掛金を売ること」
「手数料は10〜20%が相場」[1]
「必要書類:請求書、通帳コピー、決算書」

こんな感じで、要点をびっしり書き込みました。
後で見返すと、自分の理解度が分かるんですよね。

資金繰り表も手書きです。
「4月15日 A社より入金予定 500万円」
「4月20日 材料費支払い 150万円」
アナログだけど、書くことで頭に入るんです。

アナログ派でもできた実践型スケジューリング術

スマホは使えますが、大事なことは手書き派。
でも、それでも時間管理はできるんです。

私のスケジュール管理法は、超シンプル。
月間カレンダーに、現場の予定と娘の行事を色分けして記入。
赤は絶対に外せない予定、青は調整可能な予定。

「○月○日 参観日(赤)」
「○月○日 A様邸基礎工事(青)」

これだけで、優先順位が一目瞭然。
娘の参観日は絶対に休むと決めているので、その日は現場を任せられる体制を事前に整えます。

朝一番にその日のTO DOリストを作成。
優先順位をつけて、終わったら線で消す。
単純だけど、達成感があって続けられるんです。

「現場で鍛えられた」段取り力と家族の協力

建設現場では、段取りが命。
天候や資材の到着時間、職人さんのスケジュール…
複数の要素を考慮しながら、効率的に進める必要があります。

この「段取り力」が、実は家庭でも役立っています。
夕食の準備をしながら洗濯物を取り込み、その間に娘の宿題チェック。
まさに現場仕事と同じ感覚です。

でも、一人では限界があります。
夫の協力、母のサポートがあってこそ。

「今日は遅くなるから、ひなたの迎えお願い」
「分かった、任せて」

夫のこの一言に、どれだけ救われているか。
母も「帳簿はやっておくから、現場に行ってきなさい」と背中を押してくれます。

家族の理解と協力。
これが、ワーキングマザー社長の一番の財産かもしれません。

女性経営者として伝えたいこと

男性中心の業界で信頼を得るまで

建設業の会社における女性管理職の割合は平均で6.2%と、全業種の中で最低という現実。
私も、最初は本当に苦労しました。

初めて現場監督として働いた時、職人さんに「お嬢ちゃん」と呼ばれて。
「お嬢ちゃんじゃありません、佐藤です」
何度訂正したことか…

父から会社を引き継ぐ時も、取引先から心配されました。
「女性でも大丈夫なの?」
「現場のこと、分かるの?」

正直、悔しかったです。
でも、その悔しさをバネに、誰よりも勉強しました。
建築の知識、法規、そして今回のファクタリングのような資金調達方法も。

「女性でも大丈夫か?」と聞かれた時の気持ち

「女性でも大丈夫か?」

この言葉を聞くたびに、複雑な気持ちになります。
悔しさ、怒り、そして「見返してやる」という決意。

でも、今は少し違います。
「大丈夫です。むしろ、女性だからこそできることがあります」
そう答えられるようになりました。

細やかな配慮、コミュニケーション能力、そして何より「頑張る姿を娘に見せたい」という強い思い。
これらは、私の強みだと思っています。

ファクタリングを学んだ時も同じでした。
「女性経営者には難しいかも」なんて思われたくない。
だから、人一倍勉強しました。

等身大の自分で発信し続ける理由

なぜブログを書くのか、よく聞かれます。
「恥ずかしくない?」「失敗談まで書くの?」

でも、私は等身大の自分を発信したいんです。
完璧な経営者なんていません。
特に、女性経営者は少ないから、参考になる情報も少ない。

だから、私の失敗も成功も、全部お話しすることにしました。
ファクタリングの契約で作業着を着て行った話も、手数料の計算を間違えた話も。

同じような立場の女性が「私も同じ失敗した!」「これ、参考になる」と思ってくれたら嬉しいです。

建設業界には、もっと女性が必要です。
建設業界における女性の就業割合は、全体で約38%ですが、現場で働く女性はまだまだ少ない。

でも、だからこそチャンスだと思うんです。
女性ならではの視点で、業界を変えていける可能性がある。

まとめ

長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

ワーキングマザー社長として、毎日が挑戦の連続です。
朝5時半から始まる一日、現場と事務所と家庭を行き来する日々。
資金繰りに悩み、ファクタリングという新しい方法に出会い、失敗しながらも学んできました。

ファクタリングは、あくまで「選択肢の一つ」です。

建設業界は目的物が完成した後に報酬が支払われる請負契約だからこそ、資金繰りの手段として知っておく価値はあります。
でも、手数料もかかるし、計画的に利用することが大切。

私がこの記事で一番伝えたかったのは、「一人じゃない」ということ。
建設業界で頑張る女性経営者の皆さん、子育てしながら会社を経営している皆さん。
失敗しても、悩んでも、それでいいんです。

「まだまだ修行中ですが、一緒に頑張りましょう」

これが、私からのメッセージです。

娘が大きくなった時、「お母さんみたいな社長になりたい」と言ってもらえるように。
今日も現場で、事務所で、そして家庭で頑張ります。

同じような境遇の方、ぜひ情報交換しましょう。
建設業界の女性経営者仲間が増えることを、心から願っています。